放し飼いで免疫力が向上、薬剤に頼らない養鶏を実践
ニワトリノニワは、日本最後の清流といわれる四万十川と黒潮の流れる土佐湾に囲まれた丘の上にあります。周りに民家がなく、静かで自然に恵まれた環境のなか5,000平方メートルの広々とした農場に1,800羽の鶏が放し飼いされ、のびのびと暮らしています。一般のケージ飼い採卵鶏の飼育密度に比べると200倍もの低密度です。
日本の養鶏場では何万羽もの大羽数飼育が主流となっているのに、ニワトリノニワは放し飼いという1%にも満たない飼育方法で卵を生産しているのは、なぜでしょう? ニワトリノニワ代表の池田さんは「放し飼いのメリットは主に免疫力の向上です」と説明します。
スーパーなどで大量に販売される卵を産む鶏は、巨大な工場のような養鶏場の中で鉄製のケージ(カゴ)に入れられ、餌を食べる以外はほとんど身動きできない状態で過密飼育されます。さらに最先端の養鶏場では完全密閉型で空調管理され、太陽光を遮断してLED照明で人工管理されています。場内を薄暗く調整し、可能な限り産卵以外のことに体力を使わないようにされており、走り回ることも、羽ばたくこともなく一生を終えます。
これでは運動による免疫力の向上は見込めませんので、一般の養鶏場では病気を防ぐためにワクチンや抗生物質に頼らざるを得ないのです。一方、放し飼いでは太陽の光を存分に浴びるので鶏の体内で免疫力を向上させるビタミンDが生成されます。また、自由に走ったり、羽ばたいたりすることでリンパ球の一つであるNK細胞(ナチュラルキラー細胞)が活発化します。NK細胞は体内に侵入したウイルスや悪性変化を起こした細胞を攻撃して殺すので免疫力向上に直結します。
「鶏を放し飼いすることで、彼らが本来持っている自己免疫力を高めて健康維持に委ねています。これは人間にもいえることですが、進化の早い未知なるウイルスや細菌に対してワクチンや抗生物質では無力なのです」と池田さんは指摘します。