環境へのこだわり
黒富士農場は山梨県甲斐市の標高1100mの山ふところに位置し、周囲を山梨百名山の3000メートル級の山々に囲まれた自然豊かなロケーションにあります。
黒富士農場の向山一輝さんは「冬は寒いですが夏はとても涼しく、鶏たちにとって、とても過ごしやすい環境です。農場内には地中に染み込んだ雪解け水がコンコンと湧き出る天然湧水があり、その清水が鶏たちの飲み水、餌に使う水になっています。と言います。黒富士農場は、豊かな自然環境、放牧、天然湧水にこだわり、人も鶏も幸せな環境を求めて農場づくりを進めてきました」と言います。
日本の一般的な採卵鶏(卵を採る目的で飼育する鶏)は、ほとんどが閉鎖型(ウインドレス)鶏舎の中でスチール製のケージ(1羽から6羽ぐらい入れるように仕切られたカゴ)を何段にも重ねたバタリーケージで飼育されており、養鶏場の90%以上がバタリーケージを採用しています。
ケージ内の鶏1羽あたりの広さはB5サイズ(257mm×182mm、0.012平方メートル)程度で、中に入れられた鶏は羽を伸ばすこともできず、弱い鶏は強い鶏に圧迫されて餌も食べることができません。また、つつき合いによる怪我を防ぐために嘴を切られます。最新の閉鎖型鶏舎は完全密閉で、LED照明で調光されているため、鶏は一生太陽の光を浴びたり、外の空気に触れたりすることはなく、卵を産まされ続けて採卵率が落ちると廃鶏として殺処分されます。
海外に目を向けるとEUでは2012年から従来型のバタリーケージは禁止になっています。また、アメリカでは州ごとに異なりますがバタリーケージを禁止する州が増えており、大手スーパーマーケットやマクドナルド、サブウェイ、デニーズなどの大手外食チェーンもケージフリー卵(ケージ飼いではない平飼いなどの卵)に切り替える動きを見せています。日本ではまだまだ先のようです。
一方、黒富士農場では一部を除いて、十分な放牧スペースがある放牧場つき平飼い鶏舎で、鶏が放牧地と平飼い鶏舎を自由に行き来できる自然放牧養鶏を行い、自然放牧卵、リアルオーガニック卵(有機卵)を生産しています。
向山さんは「放牧場つき平飼い鶏舎は18棟あり、鶏舎の大きさに合わせて1棟あたり1,200〜2,000羽が飼育されています。ただ、自然放牧鶏とオーガニック鶏とは飼料が違うので鶏舎・放牧場を分け、混合することのないようにしています」と説明してくれました。
平飼い鶏舎内での1羽当たりの飼育面積は、どちらも有機JAS規格をクリアする1羽当たり0.2平方メートルとなっています。一般的な養鶏場(ケージ飼い)に比べてはるかに低密度です。
放牧地にはクローバーの種を播き、四季折々に自然に生える野草とともに鶏に自由に食べさせています。平飼い鶏舎の中には鶏たちが自由に止まれる止まり木があり、天然の敷料を施すなど、鶏が暮らしやすいよう配慮しています。鶏は本来の行動ができ、ストレスなく新鮮な空気、自然な日光を浴びて伸び伸びと健全に育ち、健全な鶏から健康で美味しい卵が産まれています。